ルポvol.67 【外国ルーツ】
WEBセミナー『クルドの子の「命」を守る』を受講する
これでは、壁に囲まれた「監獄」と同じ。日本での生活について、在日クルド人の青年メルバンさん(仮称)の話を聞くと、そう思う。母国トルコ政府から追われて、家族と共に日本にたどり着いてから15年。難民申請するも認められぬ「仮放免」という立場では、県外移動の禁止、就労の禁止、住民登録の不可など、さまざまな制約が課される。「人権が保障されていない状態です」と、画面越しに彼は訴える。
2025年9月15日に行われた連続WEBセミナー『クルドの子の「命」を守る』を主催したのは、認定NPO法人メタノイア。難民や移民などを含め外国ルーツを持った子どもたちを支援する団体(代表・山田拓路さん)である。「外国人排斥」を主張する政党が現れる中、在日クルド人への誹謗中傷やヘイトスピーチが横行して久しい頃だった。問題の本質や実態が知りたいと4回の講座をすべて受講すると、「難民」の過酷さを実感。また、脅迫電話、ネットでの誹謗中傷といったヘイトの矛先が、支援者にも向けられる現実も紹介され、暗澹となった。
「国」を持たないクルド人の複雑な背景
現在、日本では、2000人近いクルド人が暮らす。埼玉県の川口市や蕨市に居住することから、「ワラビスタン」などと呼ばれる。クルド人は「国」を持たない「世界最大の少数民族」とされる。推定人口は3000~3500万人 。トルコ、イラク、シリア、イランにまたがる地域に暮らすが、各国では少数派の民族集団として脆弱な立場にある。「クルディスタン労働者党(PKK)」が中心となり独立運動を行うも、1990年代のトルコ政府の迫害で、約300万人のクルド人が故郷を追われた。在日クルド人の多くは、その頃、ビザの不要なトルコ国籍のパスポートを使って、日本の土を踏むことになる。以来、難民申請するものの、日本政府に難民認定されたのは、1名にすぎない。
民族や国を越えた、大人の連携を
冒頭のWEBセミナー第1回の講演者が、メルバンさんだった。「在留資格」を得ることができ、現在、メタノイアのスタッフとして、在日クルド人の子どもや若者をサポートしている。彼の話でショッキングなのは、日本人からの理不尽な差別のひどさである。そして、強制送還の不安。学校へ通い、友だちに囲まれ、日本の生活にもなじんでいた何人もの子どもたちが、ある日突然、出入国在留管理局(入管)より強制退去を受けたという事実を紹介。「ぼくの人生がむちゃくちゃに壊された」と肩を落としたという、ある少年の嘆きが胸に残る。
改めて、主催者であるメタノイア代表の山田拓路さんに、クルドの子どもへの支援についてうかがいたいと取材依頼すると快諾。インタビューの中で、ヘイトの実態や、差別を直接受ける子どもたちの状況、そして具体的な支援内容を知る。また、「仮放免」「在留資格」「強制送還」など、難民問題を理解する上でのキーワードも説明いただいた。
聞き終わって、ある思いが湧いてくる。クルドの子たちを守れ得ない日本は、「人権を尊重しない社会だ」と実証してしまうことになると。世界に遵守を誓った「子どもの権利条約」が成り立たない風土は、結局、日本に暮らす、すべての1人ひとりにむごく跳ね返ってくるのではないか。排除し、助け合わない社会が、どうして「豊か」といえよう。
(山田拓路さんのインタビューは、2025年11月12日、足立区内のメタノイア内の教室にて行った)

コメント