未来を阻まれる、在日クルドの子たち

外国人
生きることが否定される「仮放免」という立場

在日クルドの人たちは、1人(北海道の裁判で認定を勝ち取った)を除いて、難民認定を受けていません。2000人のうち数百人の人は在留資格がなく、「仮放免」という立場。退去強制令書の発布を受けていて、いつ収容されても強制送還されてもおかしくない。本来、強制送還までの間、入管に収容されますが、「やむ得ない事情」がある場合、一時的に入管の外で、街での暮らしが認められる。これが「仮放免」と言われます。

 

「仮放免」には、「定期的に入管に出頭」「許可のない県外移動は禁止」「就労禁止」「健康保険入れず」などの厳しい制限が課せられます。しかし、生きていくには、働かざるを得ない。どうするかというと、人によって色々でしょうが、クルドコミュニティーにつてを求めることに。会社経営をしているなど、比較的裕福なクルドの同胞を頼るわけです。会社としては、ケバブ屋さんなどの食料品・飲食店業や、解体業者などの建築系が多いですね。

 

仮放免のクルドの人たちは、ある日、突然、収容や強制送還されることが。収容・強制送還と仮放免の境い目には、何か明確な基準があるわけではなく、入管当局の恣意的な判断に任されているケースもあるようです。かつて、子どもが収容・強制送還されるケースもありましたが、最近はほぼないと聞いています。基本的には、成人男性が収容される。お父さんを捕まえておけば、その家族は逃げないだろうというのが、入管の考えなのでしょう。こうした状況は、クルドの人たち心を追い詰めています。

 

「在留資格」を持たない子どもたちの不安

ちなみに、日本での「在留資格」は、29種類あります。大きくは、「身分や地位に基づくもの」と「活動に基づくもの」に分れる。クルドの人たちは、基本的に「難民申請者」という立場なので、後者の分類の下にある「特定活動」のくくりで在留資格をもらえることができる。この「在留資格」のない人は、「非正規滞在者」と呼ばれ、人によっては「仮放免」状態になるわけです。

 

母国から親に連れて来られた子、また、日本で生まれ育った子どもは、とても不安定な立場にあります。仮放免であるので、子どもであっても、強制送還の可能性がつきまとう。世界的な潮流では、どういう立場であれ、外国ルーツの子どもたちが、国内で暮らす権利が認められています。日本においても、国連の「子どもの権利条約」を批准(1995年)しているわけで、外国ルーツの子どもたちの権利を守る責任がある。こうした主張で裁判を起こし、「外国ルーツの子どもの在留資格を取得しましょう」という動きがあります。その際、裁判官が判断基準とするのは、「いかに日本社会に溶け込んで育ってきたか」という「定着性」です。訴える側の親や弁護士がそれを証明するには、やはり学校の通学なんです。小中学で中退したとなると、承認されにくい。高校にも行き、大学にまで進んで日本語もペラペラとなれば、在留資格が得やすくなります。しかし、子どもが在留資格を取得しても、親は叶わずに強制送還となり、家族が引き裂かれてしまうことは、やはり起きています。

 

外国ルーツゆえに必要な進学サポート

私たちは、クルドの子どもに向けて、高校受検などの進学支援もしています。学習に関しては日本語が中心になりますが、面接や作文など多様な試験内容に合わせた入試対策も。今の時期(11月末)だと、学校説明会へ一緒に行って、どの学校がいいかと進路を決める伴走をしています。外国籍だと、やはり手続きが複雑になるので、書類作成などの手伝いも必要に。

 

入学してみたら、学校側に、外国ルーツの子を受け入れる体制が整っていなかった、その子とマッチングしてなかった、という事例がたくさんあります。「サッカー部に入りたかったのに、部活自体なかった」という、初歩的な事実誤認もある。クルドの子の親自体、日本語が不自由で、しかも日本の学校、また「教育」そのものに関心が薄いことが多い。子の方も、事前に情報収集もせず、「家から近い」「制服が可愛い」など、漠然とした理由で選んでしまう。私たちは、「そんなことじゃなく、あなたは、高校で何がしたいのか?」「必要な日本語学習の支援が受けられるか?」などと、その子に、親も交えて問いかけながら、進路を決めていくことに。

 

日本語レベルで、就職先が決まってしまう

「在留資格」がある若者には、就労のサポートも行っています。企業へ直接かかわることはしませんが、伴走はできる。「どんな仕事がしたいのか」という希望を聞いて、日本語のレッスン内容を多少調整するといった感じです。やはり外国ルーツの人を受け入れる会社が少ないうえに、日本語のレベルで業種が決まってしまう。学習2年程度だと、コンビニや居酒屋、ファストフード店などに。学習が浅い段階では、工場でのお弁当づくり、ホテルのベッドメイキングなど、言葉が通じなくてもできる作業に限られます。

 

稀には、芸能界入りしたケースも。テレビに出ずっぱりという人はいませんが、映画で活躍する若者はいます。ファッションモデルとしての活躍の場もあるようです。

 

外国ルーツの子の日本語教育は、高いスキルが必要

川口市内の公立学校は、クルドの子たちを含め、外国ルーツの子をたくさん受け入れています。現場の先生たちは、本当に頑張っておられる。ただ、国としての支援は十分ではなく、正直言って手が回っていないようです。

 

一般的に、大人の日本語教室はそれなり存在する。足立区にも15カ所ほどあります。しかし、子どもを受け入れる日本語学校が極端に少ない。足立区では私たちを含め、NPOで受け入れている3カ所ほど。この区には、外国ルーツの子が2000人超えているというのに。なぜ増えないかというと、おそらくノウハウがないと感じる支援者が多いからでしょう。

 

大人の日本語教室は、どちらかというと、日本人ボランティアとおしゃべりして、言葉や人に慣れていくという感じのところが多い。しかし、子ども相手となると、認知能力の発達も考慮に入れなければならないので、日本語教育のスキルに加え、幼稚園や小学校といった教師のスキルが必要に。さらに、子どもたちの出身国である各々の国の文化や政治的な背景への理解まで求められます。そうなると、相当に専門的が高くなり、ボランティアではなかなか難しい。私たちの教室で授業される先生方にしても、日本語教師の資格がある方がほとんど。その上で、保育士や教員免許といった、ダブルライセンスを持たれている方もいる。

 

今、文部省は、日本語教育の専門家である教師を増やそうと予算化していますが、一気に増えるということはないでしょう。ただ、10年20年を見据えた事業なので、状況が徐々に改善していくことを期待しています。

 

日本人の子にとって、生活の中での異文化の出会いに

外国ルーツの子は、学校に通うわけですから、日々日本人の子と交流している。ただ、日本語の壁や、異文化への無理解に出会い、疲れている。それは残念なことです。だけど私は、多様なバックグラウンドを持つ子とクラスメイトになることは、日本人の子に、とても良いことだと思うのです。遊びの中で、喧嘩したり、仲直りしたりする。お互いの家に行けば、異文化に出会う。例えば、日本人の子が、クルドの子の家に行き、クルド料理が出て来てすごく美味しいと感心し、また、違う食習慣に驚く。後年、成人して、中東の国に駐在することになって、「あいつの家で食べたっけ」と懐かしく思い出す。やはり、そういう経験をした子たちは、大人になってから世界に出て行きやすくなる。もう日本の中だけで鎖国的に生きていく時代ではありません。早いうちから、多様な文化に身近に接していくのは、これからの世代にとって必要じゃないか、と思います。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

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