未来を阻まれる、在日クルドの子たち

外国人

 

<インタビュー・山田拓路さん>

 

立ちはだかる壁は、「差別」と「入管」

クルドの人たちがぶつかる壁が、大きく2つあります。1つは、差別の問題です。日々、街で見かけるクルドの人たちの姿が「急激に増えた」として、ネットで取り上げられる。それがバズって、「これは問題だ」と拡散されていきました。もう1つは、出入国在留管理庁(以下、入管)による在留資格の問題。難民申請を認めず、在留資格を付与されないことで、クルドの人たちがいろいろな不利益を被っています。

 

今回の講座では、これらのことに関して各々の専門家を呼んで、正しい知識を広めたいということで、4回シリーズで企画。第1回に、在日クルド人のメルバンさんが、自身が差別されてきた経験を話されました(第2回・弁護士の神原元さん、第3回・東京大学大学院准教授の髙谷幸さん、第4回・「在日クルド人と共に」代表理事の温井立央さん)。彼の話を聴けば、ネットでなされるクルドの人たちへの発言が、いかにひどく、無責任なものかが分かります。

 

「クルドカー」はじめ差別発言は、バズるためのウソが多数

ネットに、誹謗中傷する記事を書きこむたち人は、実際のクルドの人からの直接話を聞いたこともなく、知りもしないことを発信している。そもそもネット上の言説は、裏取り(事実確認)もせずに、好き勝手に書けるわけですし。こうしたことがまかり通るのは、「民族」に対してヘイト的な言説を書いても、罰する法律がないことも背景にあります。

 

クルドの人は、複雑な歴史的背景から、国家を持ちません。複数の国にまたがって暮らしており、各々の国では少数派で、差別や迫害の対象にされています。国を持たないということは、彼らが差別されても守ってくれる政府がない、ということ。差別する側から言えば、とてもやりやすい。大国の国籍を持つ人たちを差別すれば、その国の政府から何らかのアクションを受ける可能性がある。しかし、脆弱な立場にある国なら、その心配はない。歴史や事実関係を調べもせず、宗教も見た目も、日本人とまったく異なるという表面的な違いから、「クルド人」を標的にしているだけ。

 

例えば、非常にバズった話題の1つに「クルドカー」がある。「クルドカー」とは、「産業廃棄物を異様なほど過積載したクルド人の運転する車」を指します。現場の写真や動画がたくさんアップされましたが、とても恣意的で事実自体をゆがめた内容にされている。そもそも写されている人物が外見上より「クルド人」であるかは特定できません。私も3年お付き合いしていますが、トルコ人、クルド人(国籍はトルコ人であることが多い)、シリア人に関しては、まず区別できない。たとえ、クルド人の「クルドカー」が実際にあったとしても、ごく一部の事例を取り上げてリピートされている。彼らが、日本のルールを理解せずに、何かを違反してしまう可能性があるのは確か。しかし、過積載が本当に常態化していれば、取り締まりの対象にされ、業務が継続できないようにされているはず。

 

在日クルド人は、現在、約2000人いるとされていますが、若い世代が多い。やんちゃな道に入って、無軌道なことをする者は存在します。無免許で運転し、ドリフトする動画も流布しました。しかしそういう輩は、日本人の中にも同じようにいます。9割9分のクルドの人たちは善良な市民で、彼らの行為を本当に迷惑に思い、「やめてほしい」と言っています。「クルド人は悪い」と一括され、差別を助長してしまうからです。クルドの人は、「仮放免」の方が半数なので(後で詳細を話しますが)、ちょっとした犯罪でも、逮捕されれば一発で強制送還に。そもそも犯罪を起こそうとする動機が起こりにくい状況なんです。

 

暴力行為を受けるクルドの子どもたち

クルドの人が、「何かを意図的に違反している」「犯罪行為に手を染めている」という言説は、大抵の場合、事実に基づいておらず、デタラメです。実際は、暴力の被害を受けている側であることが多い。大人はもちろんですが、子どもの場合が深刻です。

 

あるクルドの子どもは、街頭で、日本人の男性にいきなり「クルド人は、犯罪集団だから出ていけ!」と大声を浴びせられました。男性は、子どもの肘を血が出るほどつかんで恫喝したんです。これはさすがに通報し、警察沙汰になりました。

 

事実の捏造による中傷にもさらされています。幼い子どもを盗撮した動画に、「このクルド人の子は、今、お店で万引きしました」というコメントを添えられSNSに拡散されました。実際は、やってないことです。しかし、たちまち数百万のアクセスがありバズる。「いいね」をしたり、「クルド人は、やっぱり危険」など書き込んだり。今では、子どもたちも若者たちも、見知らぬ人からスマホを向けられるのさえ怖がっています。

 

差別から避難し、ほっとできる「居場所」として

私たちメタノイアでは、埼玉県川口市の蕨駅近くの教室に、クルドの子を30~40名ほど受け入れています。日本語を教えるなどの学習だけでなく、ただおしゃべりしたり悩みを打ち明けたりできるような「居場所」に。

 

今、学校では「クルド人」だと分かれば、差別されたり、悪く言われてしまう。とくに思春期の子は、「私はトルコ人(トルコ国籍の場合、間違いではないが)」だと、あえて言うそうです。クルド人であることを知られたくないからです。ここに来ればクルドの友だちや、常駐のスタッフがいるので、子どもたちはほっとできる。スタッフの1人で、講座で発言をされたメルバンさんは、親身で優しい人なので、小さい子はもちろん中学生にも人気が。彼を慕う子は多いんです。

 

日本語の能力は、バラバラですね。すでに10数年暮らして日本語の方が上手い子もいますし、来たばかりでほぼ話せない子もいます。さすがに、ここ1、2年は、日本に来るクルドの家族はいません。「差別がひどい国」という風になっていますので、ドイツやドバイなど、他の国に向かうようです。

 

在日クルドの人たちは、日本から他国に出国したくても、パスポートが「生きている間」は、第三国に移ることもできる。しかし、もし期限切れとなれば、それが不可能に。基本的には「難民」という立場だからです。パスポート発行のために在日トルコ大使館に行けば、身の危険が及ぶ可能性は高い。

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