ルポvol.64 【ジェンダー】
2階の天井から雨がもる。1階の床から隙間が吹く。家は老朽化しているのは確か。多少、ガタがくるのはしかたない。補修? 今の物価高じゃあ、そんなの後回し。生活が立ちいかない。先延ばしにしよう、とほったらかす。すると、ある日突然、家は倒壊してしまった。原因は、土台下の巨大な空洞だ。いつのまにか成長した無情の穴は、住まい手の人生を、あっさり闇へ吸い込んだ…。
少子化の背景にある「ミドル期シングル」の存在
「家」は「日本社会」、「穴」は「少子化」(による人口減)としてみる。「穴」を大きくしている直接の作用因が、増大する「ミドル期シングル(独身で中年の1人暮らし)」であった。 つまり、私自身が体現している世代グループである。こんな寓話を思い浮かべたのは、放送大学・千葉大学名誉教授の宮本みち子さんの講演を聞いたときの「衝撃」を、何とか表現したかったからだ。
2025年6月28日、「エル・ソフィア」(足立区梅田)の4階大ホールで、「男女共同参画記念ふぉーらむ」が開催された。演題は、「子どものため、未来のため、ジェンダー平等を考えよう」。足立区女性連合会の主催であり、テーマの中核は「ジェンダー問題」だ。冒頭、宮本さんが示したテーゼは、「男性労働力人口が潤沢な時代は、女性の地位が低い」である。この背景を、人口学の研究から読み解いていくと、現在の日本社会の状況と構造が、鮮やかに立ち現れて驚いた。
講師・宮本さんは、足立区の「基本計画」手がけた社会学者
講演者・宮本さんは、社会学者である。専攻は、家族社会学・若者の社会学・生活保障論・社会政策。国及び地方自治体の子ども・若者政策の立案や、全国の若者支援の活動に取り組まれる。そして、15年前より、足立区にかかわられ、最近では「足立区基本計画(令和7年度から14年度まで)」策定にあたって審議会会長を務められた。また近著の『東京ミドル期シングルの衝撃—「ひとり」社会のゆくえ』(編著/宮本みち子・大江守之、東洋経済新報社)は、今、全国的に話題を呼んでいる。
開会にあたっては、足立区長の近藤やよいさんが挨拶。わが区の方向性やご自身のプロフィールを直接うかがえ、区民としては貴重な機会となった。続いて、足立区女性連合会の片野和恵さんからは、同会の活動紹介や、日本のジェンダー・ギャップへの指摘がなされた。第1部の講演は1時間行われ、第2部ではグループワーク(一緒に考えよう)が開催。濃密で有意義な2時間だった。
危機の形を一挙に見渡す爽快さ、感じる
講演をうかがって、日本社会の「倒壊の危機」を強烈に意識する。しかし、同時に不思議と爽快であった。今まで自分がバラバラに見ていた問題群が、一挙につながって、「時代」の様態をズバンと見渡せたからだ。しかも、自分が、問題の当事者「ミドル期シングル」であることをはっきり自覚する。ふと思う。この一大勢力が自覚して動けば、世の中変わるきっかけになるのではないか。すると冒頭の家は、倒壊しないだろう。穴を埋めて、地盤整備するだろうから。
(2025年6月28日、エル・ソフィアで開催された「男女共同参週間 記念ふぉ~らむ2025」の講演を記録)
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<挨拶/足立区女性連合会会長・片野和恵さん>
男女参画の視点で、社会づくり
足立区女性団体連合会会長の片野和恵です。本日は、フォーラムにお越しいただきして、誠にありがとうございます。私たちの会では、足立区男女共同参画推進の旗印として、毎年、フォーラムを行っております。昨年2024年は、「防災対策を、男女参画の視点で考える」というテーマで開催。近藤区長のバックアップもあり、多くの女性が、防災士資格を取得し、地域で活動を開始することになりました。
日本のジェンダー・ギャップは、世界の最底辺
ただ、国レベルで見ていますと、まだまだ「ジェンダー平等」は、はかどっていません。先日発表された、「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」(2025年度、スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が公表)では、148カ国中、日本は「118位」。2006年度の調査以来、ずっと最下層に位置しています。この間、社会が大きく変わったにもかかわらず、やはり日本の女性は、ジェンダーの格差に悩んでいる。一方で、昨年、日本で生まれた子どもたちが「68万6,061人」。足立区の人口より少ない。深刻な少子化に、ジェンダー格差が影響しないわけはありません。もうこの状況は、女性だけの問題ではなく、社会全体の問題です。
本日は、足立区基本計画の作成にて、私たちの会とご一緒した宮本先生を講師にお招きして、「ジェンダー平等の社会づくり」のための知見を広げられればと思います。勉強会、会場のみな様、そして次世代の子どもたちにとって、このフォーラムが実りあることを願い、開会の挨拶とさせていただきます。よろしくお願いいたします。


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