【議員として】
東京都議として提案、「通知表をなくしてほしい」
政治家を目指したのは、日野市だけじゃなく、東京都の教育を変えていきたいと思ったからです。日野市ではフリースクールのほかに、こども食堂「こころの家」も夫と運営していましたが、そんな活動をみていただいたのか、都民ファーストの会、前都議会議員・菅原直志さんに声をかけていただいたのがきっかけでした。都議会議員への出馬は、当初私の方がとまどい、むしろ夫の方が「今、やるべきだ。自分も協力する」と背中を押してくれまして。支援者は、大多数がママ友やフリースクールのママたち、そして子どもたちでした。「ママたちを代表してくれてありがとう」「学校を変えてほしい」との声を受け、2025年6月の東京都議会議員選挙(日野市選挙区)で初当選します。
この1年間、議員として、教師が子どもたちと向き合う時間を増やすため、さまざまな提案をしてきました。とくに「通知表はいらない」と訴えまして。「通知表」を廃止すれば、現場の教師の負担が相当に軽減でき、その分、子どもたちに時間をかけられます。
そもそも「通知表」は、教育上の効果も疑問視されています。成績で子どもを序列化すれば、その評価によって、自信を失ってしまう子どもや保護者もいます。さらに成績表を見て不安になった親は、わが子を「塾に行かせなければ」となります。子どもは、学校で長時間過ごした後、さらに夜遅くまで勉強させられる。寝る時間も削って。なんの「ウェルビーング(well-being)」にもつながらないですよ。
子どもの悩みを、本来、担任は受けとめられる
教師が子どもと向き合える環境にすることは、本当に最優先事項。今、全国の学校で「いじめ」が増加していますが、その対応においても、教師が子どもに向き合える環境が必要です(文部科学省の調査では、令和6年度の小・中・高のいじめの認知件数は「769,022件」。 前年度から5%で過去最多 ※注・上田)。
「いじめ」には、子どもが抱えるいろいろなストレスが背景にあります。その1つは、保護者との関係、つまり家庭環境です。例えば、家庭内での過度な教育的プレッシャーや、経済的な困難など。2次障害として、自己肯定感を持てないことが生じる。「勉強についていけない」「友だちの輪に入れない」などの理由で、「ダメな人間なんだ!」と自分自身にレッテルを張る。追い詰められた末に、他者をいじめ傷つけたり、極端になれば自殺してしまう子も…。
学校では担任の教師が、子どものつらさを感じ取って、話をしっかり聞ける立場にあります。
その上で、保護者に対する支援を外部につなげていくこともできる。私自身、子どものリストカットに気付き、対応したケースがあります。保護者に連絡を取って行政支援を勧めて、その子を心療内科に行かせました。担任だからこそ、早期に気づき、必要な支援につなげられることがあります。長時間一緒に過ごすわけですから、心身の不調、いじめといったトラブルなど、何かあったとき、表情を見ればすぐに分かるはずなんです。
困ったことに、今の教育現場では、教師が子どもたちと接するスキルを磨く時間もない。中には、自分の感情で子どもを叱る教師も。教育者として、あってはならないことです。業務過多で、教師に余裕がなくなっている。その現状を、制度として変えられるのは、やはり行政だと思うんです。

全校に「別室」を設けてほしい
一斉授業の教育スタイルも、見直す時代ではないかと思います。そのスタイルに合う子はいますし、彼らは学校に問題なく行けるでしょう。でも、合わない子は行き場がなくなってしまう。私のフリースクールに来ている子どもたちが、まさにそう。
世界には、身体を動かしながら学ぶなど、多様な教育方法があります。一方で、「動くことは悪い」というのが、日本の教育。教師の一方的な講義を、椅子に座ってじっと長時間聞き続ける。「忍耐力を養う」といった良さはあるかもしれない。でも、真面目に座っている子たちにとって、走り回って騒ぐ子は「雑音」でしかない。どうしても動いてしまう子を注意するのでなく、学校の中に「別室」として彼らの居場所をつくればいい。それを全校に設置してほしいと、議会で提案しています。
「政治家×教員のコミュニティー」立上げ、政策提言始める
今年1月に「『政治家×教員』のコミュニティ」というグループをつくりました。以降、毎月、オンラインミーティングを開催。全国から参加する議員たちと教師たちが話し合い、出された意見を各自治体に発信しています。
教師たちの声は、届きにくいのが現状です。平日長時間働いて、土日は自分たちの生活がある。だから、意見を政治に届けるという考えにはなりにくい。もともと日本人は、政治と生活が直結している意識が希薄なこともある。それでも「教育を変えたい」と望む意欲ある教師がおられ、ここに集まりました。
教師には、子どもと向き合う専門性があります。 その一方で、学校の業務改善や組織マネジメントについて、外部の専門家から学んだり、支援を受けたりする機会は限られている。そんな反省から、「民間コンサルタントのプロに入ってもらって、業務の見直しをしては」という提案がされました。早速、コンサルの方が参加した教師たちのグループワークが実現。「本当に必要なことは何か?」を洗い出し、「じゃ、これを変えましょう」と、さまざまな改善点が挙げられました。以下は、コミュニティで「教員の働き方改革」の元になった議論です。
最近の事例では、「給食の際、担任が付きそう必要はないだろう」というもの。その時間に、保護者のサポーターに入ってもらえばいいのではと。教師は、朝の登校時から下校まで、休憩なしに子どもたちを見ている。給食時間ぐらい、職員室でゆっくり昼食を取って、息抜きしてもいいわけですよ。食事している子どもの横にいれば、「口の中に入れたまま、しゃべったらあかんよ~」みたいな注意をしてしまい、気が休まらないですから。
「スクールロイヤーの活用」も、話し合われました。近年、学校には、保護者や地域の方から寄せられる相談や要望が、より高度で複雑になっています。教師や学校だけでは対応が難しく、長期化するケースも増加。そのため過度な対応に追われ、子どもたちに向けるべき時間やエネルギーが奪われてしまう。こうしたことから教師を守る必要があります。それには、複雑化した問題を弁護士などの専門家に任せる体制つくればどうかと。
グループワークで出された事案を、教師に各自の学校に持ち帰ってもらうこともあります。「自分の学校で、これとこれを取り入れてみよう」と。こうした活動が積み重なっていけば、
学校教育の「当たり前」を見直していくことも、いずれ可能になると思います。
学校とフリースクールは協力関係になるべき
都議として私は、都内におけるフリースクールの充実も訴えています。今後、数自体を底上げし、質を保障する認可制度の整備も必要となるでしょう。学校に行きづらさを感じる子どもが、今も増えているからです。
ただ、運営する立場から見ても、フリースクールはまだまだ一般化してないなと。利用率は全国で「5%」を切っていますし(「3.7% 」出典/認定NPO法人高卒支援会 ※注・ 上田)、学校に行きづらさを抱える子どもの率もそう多くありません。学校側の理解が、まだまだ進んでいないことも理由の1つです。
2023年、私がフリースクールを立ち上げた当初、学校は「好意的」というわけではなかった。「不登校児を出すのは不名誉」だという感じです。自分の生徒が、他のところで楽しく過ごすことは、教師にとって自身を否定されたように思えたかもしれません。
でも、「学校だけで子どもを育てる」という常識を、もう取っ払ってほしいと考えています。学び方は、子どもの個性に合わせて多様であっていい。学校も地域も保護者も協力し合って1人1人の子どもを支えてほしい。フリースクールはその選択の1つとして、利用してもらえばいい。
ただ現在、学校側も、だいぶ前向きに変わってはきています。「教育機会確保法」(2016年施行)に基づき、フリースクールに通っていれば「出席扱い」になることが、一般社会にも徐々に認知されるようになってきましたし。また、私は、「学校へ行けない子を学校に戻す」というより、「子どもに合った学び方や居場所を選べる」ことこそ、社会が目指すべき方向だと考えています。
【支えられて】
「自分の意見を言える」を教育の軸に
18歳のとき、アメリカ・ワシントン州の大学に留学しました。衝撃だったのは、自分の意見を言わないと、点数にならないということ。しかも、世界中から集まった学生たちは、みんな楽しそうにそれをやっている。私は、心に思っていても、意見を言えない自分にあせりを感じてしまって。これまで私が日本で受けて来た教育は、先生の話をひたすら静かに聞くことでした。それって、「自分の色を出すな」ということです。だけど就職するときには、「自分の色を出せ」と言われてしまう(笑)。後年、留学時代の経験を活かして、小学校時代の「学活」やフリースクールでの活動で、「自分の意見を言える教育」を実践でき、手ごたえを感じています。今、私は、教師や保護者をはじめとする大人も巻き込んで、大人自身が社会に意見する運動を始めているのかもしれません。
議員になって、より毎日が忙しくなりました。顔を出せなくなってフリースクールや「もも塾」のママたち、そして子どもたちから、「『みんなのももちゃん』になるのは寂しい」「遠くに行ってしまいそうでこわい」という声をいただき、胸が熱くなってしまいました。ここは、自分自身にとっても大切な居場所なんだと。
わが子は5歳、7歳、10歳の3人で、子育て真っ最中。夫婦ともに仕事に追われて、家族で過ごす時間をやりくりすることにいつも苦労しています。先日ですが、子ども3人を友人宅で過ごさせて、お泊りまでも。公私ともに、本当にたくさんの方々に支えられ、お世話になっています。これからもみなさんの力をお借りして、「教育」を変えていきたいです。
(聞き手・ライター上田隆)

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