ルポvol.68【不登校】
18歳まで学校に行かず、いきなり社会に
「入」という漢字を、妙に角ばって書くなと思って尋ねたら、パソコン画面の文字の形をそのままに覚えていたらしい。教師がチョークで書いた文字を、一度も見たことがない…。職場にバイトで入って来た、当時18歳の清水伊吹さんのエピソードを語るのは、佐久間久美子さん(ルポvol.68)。不登校児にかかわる「キラキライキイキプロジェクト」の副代表にして支援者の目からしても、清水さんの経歴は特異だった。出会った時点で12年間も不登校を通し、社会経験が著しく乏しいかったことに驚いたという。
「当時、『人間になってなかった』と、よく佐久間さんに言われました」と笑う清水さんは、今、25歳。話の中の姿とは違い、落ち着いた知的な青年として目の前に座っている。
母と不登校のきょうだい3人と過ごした子ども時代
不登校だったのは、小学校1年生から高校3年の年齢まで。つまり18歳まで、学校経験が丸々なし。ほかきょうだい3名も、学校へは行っていない。シングルマザーに育てられ、子ども時代をほぼ家で、家族と過ごす。母が亡き人となった年、バイト先で出会った佐久間さんのサホートを得て、教育の機会を得る。19歳で夜間中学校、20歳より定時制高校で学び、23歳で大学に入学。現在、国語教師を目指して猛勉強している。12年の空白を、一気に6年に圧縮しまう 凄まじい学習意欲だ。不登校児とかかわるチャレンジ学校で教えることが目標だという。
不登校児の気持ちを知る、今、教育界に必要な人
インタビューしながら、「ここでこんな支援があったら」「介入があったら」というポイントがいくつも思い浮かぶ。不登校対策には、支援制度の整備や、さらには学校自体の改革が必要であり、話の中でその糸口を見つけ出す人もおられるだろう。しかし、全てを聞き終えてみると、「時」という言葉が脳裏に浮かぶ。「出会うべくして出会う時」「学ぶべくして学ぶ時」が重なって、人生が動いている。一番の原動力となるのは、結局自身の「どうしたいか?」と自発する心であると語るのは、清水さんその人だ。そして今度は、自身が不登校児にかかわろうと決意し、教師のキャリアをスタートさせようとしている。これからの学校、教育界に、とても必要な人である。
(清水伊吹さんのインタビューは、2026年4月24日、綾瀬駅前のレストランにて行った)

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