<インタビュー・栗野泰成さん&茂呂史生さん>
イメージは、「相談者と支援者を窓口1つでつなぐ」
SKIPの構想が下敷きにするのは、国が市町村に設置をすすめる「こども家庭センター」。2022年に改正された児童福祉法に基づき、2024年から全国で開設されている。同センターは、支援対象とする「全ての妊産婦、子育て世代、子ども」からの相談を、地域の支援団体や関係機関へ支援をつなぐ。また、「子ども家庭総合支援拠点 (児童福祉)」と「子育て世代包括支援センター(母子保健)」を維持した上で組織を見直し、運営するとされる。
SKIPの描くイメージは、行政の代わりに民間として、「全ての妊産婦、子育て世代、子ども」と「足立区内の支援団体・関係機関(事業者)」の間に入り、両者を橋渡しするプラットフォームになろうというもの。相談窓口は、スッキリ1つにする。また、相談者は、スマホのLINEか面談で直接アクセスできる。そしてSKIPが、受けた相談を迅速に対応できる事業者につなぐ。例えば、医療的ケア、発達障がい、いじめ、不登校、生活困窮、ヤングケアラー、外国ルーツ…などを専門とする事業者に次々依頼。支援が開始されれば、SKIPは、事業者から経過報告を逐次受け、その都度報酬を支払う。
LINEでの相談は、「チョイふる」が日頃の活動で実践しており、ノウハウがすでにある。LINEは、相談者にとっては、相談の垣根が低く、支援者と日常的につながれる。しかも、支援の案内情報も受け取りやすい。一方で支援側は、相談者の声を直接受けられ、相談内容も記録化できる。まさにLINEは強力なツールだ。
設立の背景には、複数の問題抱える相談者の存在
そもそもなぜ、民間の支援団体たちが、「こども家庭センター」を担おうとするのか。SKIPの設立経緯からうかがうと切実な理由がある。栗野さんは次のように説明する。
「子どもの貧困に取り組んでいますが、いざ相談を受けると、例えば、外国ルーツやいじめ、不登校といった複数の問題を抱えているケースが非常に多い。『貧困』だけでの対応では、なかなか問題解決にならないと気付いたんです」。
茂呂さんも「同じです」と答える。「栗野と、医療ケアの矢部と私とで雑談したいてとき、『同じ課題を抱えているよね』って。私は知的発達障害の子どもたちを支援していますが、やはりシングルの親、不登校などといった別の課題が重なります」。
そこに、行政における「縦割り」が立ちはだかるという。
「もし相談者である親御さんが、行政機関に頼ろうとしても、いろいろ抱えている事例だと難しい。足立区内にしても、発達障害だったら『こども支援センターげんき』、貧困だったら『子ども貧困対策・若年者支援課』、虐待なら『児童相談所』と全部窓口が違う。どこに行ったらいいかと途方に暮れる。それで切羽詰まって、私の施設にいきなり飛び込みで相談される親御さんが本当に多い。栗野や矢部のところもそうです。ひどいケースだと、幼少の頃から相談できないまま複数の問題を抱えたお子さんで、中学生になってやっと支援者に『発見』された、ということもありました」。
一方で「こども家庭センター」の機関は、すでに足立区にも設置されている。どのような状況なのか。栗野さんは、支援現場から指摘する。
「足立区では、『子ども家庭センター』の管轄に『子育て世代包括支援センター』は、保健所の中にありますが、日常的に保健所自体を活用する保護者は少ないですよ。またそこは、『母子保健』に対応するのみ。『児童福祉』に関しては、同センター管轄の『こども支援センターげんき』の対応になります。別々に運営されているので、窓口も違う。保護者が相談したいとそこにたどり着いても、両方で同じことを話さなければならない。『子ども家庭センター』は、国全体として推進する方向ですが、まだ理想と現実のギャップが開きすぎています。全戸区的にも『高齢者』が対象の『地域包括支援センター』は、機能しています。でも、なぜか『子ども』はそうではない」。
保護者へのアンケート結果「利用したいが…」
支援機関と相談者(保護者)との距離は、確かに遠い。
SKIPのパンフレットに掲載された「チョイふる」のLINEによるアンケート調査では、その皮膚感覚が伝わってくる。同団体が足立区内で支援する貧困子育て家庭250世帯に、既存の支援の利用状況を聞いたものだ。答えは、次の通り。「子ども食堂を利用したいが、利用したことがない」が、51/110人(46.4%人)、「学習支援教室」が、60/132人(45.5%人)。つまり両施設を「利用していない」は、約半数となる。理由は、「利用したいが、今までこの支援制度を知らなかった」「利用したいが、手続きがわからなかったり、利用しにくいから」が、両施設合わせて約45%。
公的調査では、全国的な状況がつかめる。同パンフレット掲載の厚生労働省による「ひとり親家庭の現状と支援施策の課題」(出展/平成23年度 全国母子世帯等調査)を見てみよう。「母子世帯における公的制度等の利用・周知状況」へのアンケートでは、「制度を知らなかった」の割合が、「公共職業安定所(ハローワーク)」が低い(2.2%)一方、他の「ひとり親家庭支援施策」については、3~6割と高い。後者に対応する20機関をざっと眺めてみる。「民生・児童委員」「児童相談所・児童家庭支援センター」でさえ、「28.8%」「30.2%」。母子サポートに直結するはずの機関はどうか。「母子家庭等就業・自立支援センター(35.1%)」「母子福祉センター(44.2%)」「母子自立支援員(46.4%)」という状況。支援が、届いていない。それに、機関が多すぎて、どこへ相談したらいいのやら!


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