「面白いこと」が同時多発するカオスな場
ちょっと時間が迫っていますが、「アートな祭り」での事例を、さらに取り上げてみます。
このお祭りでだけ流通する「通貨」のようなものをつくりました。「祭り準備祭り」を開催した施設の会場名(ポルテホール)にちなんで、単位は「ポルテ」。子どもたちがスタンプを押すことで、「ポルテ紙幣」をつくることができるシステムです。ただ、通貨の使い方、価値基準を、大人たちが事前にルール設定したわけではありません。当日、子どもたちは、遊んでいく中で、使いこなしていきました。例えば、1ポルテもらったら、スタンプをたくさん押してあげる「商売」を始めた子がいる。そのために「ポルテ」のインフレが起こりましたが(笑)。またある子は、自身が制作した商品に値段という「価値」をつける。すると「買い手」の子が、「その値段では買えない」などとやり取りする。経済活動における「交渉」が、自然発生したわけです。
回を重ねるごとに、「次はこういうこともしてみよう」という子もいました。おうちにある使い捨てコンタクトレンズのケースで自作したアクセサリーを並べ、開店している。話を聞いてみると「第1回と2回のお祭のときに、途中で時間が足りなくなった。今回の3回目には、1カ月前から自宅でいろいろつくって準備した」そうです。
舞踏家の松岡大さんですが、そのダンスの動きに、子どもたちが惹きつけられる。「まるで磁石と砂鉄のよう」と言った方がおられますが、子どもたちが一緒に動く。普段、人前で踊り出すような子でなくても、つい踊っちゃう。もちろん、さ~っと逃げ出した子もいました。でも、何だろう、うっかり出会った新しいことを、身構えずに、知らない間に体験しちゃってた…そういう未知のものとの出会いが生まれたことが、すごく印象的でした。
藝大生アーティスとの山野靖暁さんが開いた「屋台」では、飲み物を提供。それらを飲んでいる時間に、子どもたちとおしゃべりする、というのが趣旨。するとある女の子が、屋台に入って、いろいろと作業し出す。「ヒマだから、お手伝いすることにしたんだ」と。実は、「お手伝い」というキーワードは、第1回目のお祭りから出ていて、それがここでも実現されていました。「自分の好きなこと」「やってみたい」ができる場で、自分自身のことではなく、「誰かのサポート」を選択したことは、その子なりの1つの答えだったわけです。
私たちが、「茶屋」と呼んでいた部屋ですが、会場の中の一角に設けました。喧騒から、ちょっと離れて休んだりとか、だらだら過ごして、だべったりできる部屋です。まったりした中で、「次は、ここに行ってみよう」という会話にもなる。ゆっくりしたコミュニケーションから、何かが生まれる空間なんですね。
いろんなことが、同時にあちこちに起っていて、すごくいろんな交流が生まれました。アートを介した交流から、「新しいアート」が生まれてくる。何か「循環」というか、キレイな1本線ではなくて、もっとごちゃごちゃした有機的でカオスな姿なんです。
次の祭に向けて、「絶賛準備中!」
お祭りが終わった後、子どもたちや関係者からの反応を、まとめました。事前ワークショップから参加していた子どもからは、「これからはもっと友情をふかめたいです」「もっとおしごとをしたい」と。
ずっとかかわって、ふだんから子どもたちの様子も見に来てくれた指導員の方々は、こう言ってくれました。「みんなやりたいこととか、得意なこととかを外に発信できて、すごい充実した顔をしてました」「のびのびと表現されるアーティストさんとかかわって、のびのびと表現するというものに触れられた、というところを強く感じた」。
3回やってきて、だんだんちょっとずつ、子どもたちと、その地域に馴染めてきたのかな、という段階だと思っています。ここで終わりにせず、来年もまた続けて行けるようにと、「絶賛準備中」です。日程と場所はまだ決まっていませんが、3月中に、来年度の「アートなお祭り」の作戦会議をします。直接声をかけられる子どもたちにも呼びかけ、まずは、たこ焼きパーティをしようかなと。もし、ご興味ご関心がある方は、ぜひお気軽に加わっていただけたら嬉しいかなと思います。
「大人たちに、何ができるのか?」
大山/ムジタンツさんがつくられたカオスな遊び場で、子どもたちは、変な感性をきちっと出してきています。それをさらに、つないで、紡いでいってくれている。ありがとうございます!
さて、第1部は終わりました。「大人たちに何ができるのか?」と改めて問えば、やっぱり一番は「場づくり」ですね。一方で、「子どもに意見を」ということは、まだなかなか難しい。でも、今年になって、足立区教育委員会関連の文書紙面に、「子どもの意見表明」というワードが初めて出てきました。「えっ、なに!?」「来たか!」と思いました。子どもの支援にかかわる人からも「チャンスだよね、大山さん!」と。これからです。「思うことを、声に出していいよ」「失敗してもいいよ」「自分のいいところを見つけていいよ」という場を、子どもたちに、本当に提供することができるのは。そんなことを、今、すご~く感じています。
(文責/ライター・上田隆)


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