中高生が、「向き合い」「対話する」居場所を

居場所

 

思い思いに、みんなで過ごす「中高生カフェ」

「子ども食堂」について改めて調べると、たいてい月1回。これでは、「居場所」としては物足りない。「おばあちゃんちをつくる」というのが、僕のイメージ。家に帰りたくないとき、ふっと立ち寄って、ごろっとしてたらメシが出てくる…。これを実現したのが1つ目の柱である「中高生カフェ」なんです。月1回から始めて徐々に増やし、現在は週2~3回(主に火・水)に。時間は夕方16時から夜21時まで。1時間ほどの食事以外は、スクリーンで映画を見たりゲームをしたり、それぞれ思い思いに過ごせます。人数が多いときは、トランプなど、みんなで遊びますね。料理は、たいてい僕がつくります。食べるときは、「美味しいか? 」なんて、子どもたちの顔を覗きまして。

 

利用者は3~7人と少ないですが、ディープにかかわっていく。ここに来る子は、本当にさまざまです。支援先や行政のつながりで紹介される子がいたり、お母さんがウェブで見つけたり。あと、子ども自身が友だちを連れて来るケースも。一応、対象年齢は、中学生から20歳まで。21歳になったら「卒業」となります。今年も2人いるかな。もちろん、卒業後もつながり続けられます。金曜・土曜に「居酒屋」を開き、無職で飲み食いできるイベントも行っているので、成人したら参加してもらってもいい。

 

その道の達人が、既成概念を壊す「寺子屋」

2つ目の柱、「寺子屋」は、プロフェッショナルな講師を招いて、学校や社会では通常教えてくれない、個性的な講座を開催してもらいます。中高生は無料、大人の一般参加も可。月1回の催しです。講師の方には、「体験型のワークショップをやるときは、対話が生まれる仕組みをつくってください」とお願いしています。「これをつくってみて、あなた自身はどう思ったか?」などの問いかけをしてほしいわけです。企画は、基本的に僕が行います。「こういう面白い人がいる」と、友だちがつなげてくれてくれることも多いですね。

 

『江戸の暮らしとアート@足立』では、獨協大学で江戸を研究されている古畑侑亮教授をお呼びし、浮世絵の見方を学びました。今でこそ高級な芸術作品ですが、「江戸時代では、ちり紙と同じレベルで身近にあった大衆娯楽」と聞いて驚きました。また当時は、夜に浮世絵を見る際には、行灯で照らしたそうです。現在の明るい照明でなく、和紙が包む行灯の暗い光が、ぼ~っと鮮やかな絵を浮かび上がらせる様を、みんなで想像できたことが新鮮でした。

 

『紙との”コミュ力”をあげる方法”~折り紙が上手くなります~』も印象深いものでした。講師は折り紙作家のハマナカ トモアキさん。とにかく「折り紙ってすごく深い!」と実感させてくたんです。ワークショップでは、「ツル」をたくさんつくりました。素人だと、決まった手順を覚えて折るもの。でも、ハマナカさんの「折り紙」の概念は違う。より鶴らしい「ツル」にするには、「肢」をつけたいと思えば、折り紙を少し縦長にし、「肢」の部分を織り込んで改造してしまう。「その考え方自体をインストールしよう」と、みんなで話し合いました。

 

感想を自由に話して楽しむ「表現の場」

3つの柱、「表現の場」は、展示会やライブ、パフォーマンスなど、あらゆる文化表現にふれる場として、地域にも開いています。中高生はもちろん無料参加OKで、不定期開催。プロアマ問わず、古民家の空間をリクエーションしてくれる人たちを、常時募集しています。

 

今までは、コンテンポラリーダンスや弾き語りのライブなど、パフォーマンス系が多かったかな。展示系としてインパクトがあったのは、『芝生図書館、私のともだち』。出展者は、うちのボランティアスタッフで、多摩芸術大学2年生(当時)のいとう えりな。彼女は、理想の空間を現実に具体化したいと、壁一面に人工芝生を貼りつけたんです。同時に、その世界観の元となった自作の絵本も展示。ページには、読めない字が綴られていますが、何かストーリーがある。僕には、宇宙人同士の会話に思えるかな。壁の芝生と絵本が響き合って、「いったい、何が語られてるのだろう?」と想像力をかき立てられます。会場では自然と「謎解き」が始まりました。

 

こうした展示会の場合、1週間はそのままに。「中高生カフェ」をまたぐので、普段子どもたちが集う空間の雰囲気が一気に変わる。あれは日本画の展示『絵と詩と、詩と絵と』だったか。壁に大きな山脈の画がかかっている。くつろいで過ごしている子どもたちに、「どんな『音』がすると思う?」など問いかけると、「この辺りで、ゴ~ッと風が吹きつけて、草原がカサカサ鳴ってる」と話す子がいたり。いわゆる「対話型鑑賞」ができました。「イベント」と「居場所」が溶け合って、何か思いもよらないものが生まれる、そんな感じです。

 

「自分の足で歩くこと」に、寄り添いたい

お互いに探り探りのところから始まって、一番長い子だと、もう3年の付き合いに。長く過ごす子ほど、「ここは何だかよく分からない」「もはや『家』なのかもしれない」と言いますね。週に2回来るわけですから、もう学校といい勝負の過ごし方になる。だから、1人ひとり、いろんな一面を知ることに。

 

最初は、「何がやりたいか、よく分からねぇ~」みたいな感じだった子が、いろんな出会いや経験をすることで、何かをつかむ。例えば、「自分は、音楽が得意なんだな」と気づいて、ネットでつながった友だちと何か作曲する。「さらに、それを発展させたい」となったとき、「らんたん亭」が間接的にかかわれます。ここで小さなイベントをやるのもいい。「自作のCDを出してみたい」なら、その方法を一緒に「どうしようか」と考える。彼ら自身が自分の道を見つけて、自分の足で歩くことをサポートするのが、僕らの役割です。

 

「逃げ場」としての簡易シェルターが必要

悩んでいる子には、本当に向き合って話をする。どうしょうもないケースは、もちろんあります。親やお金が絡んでいることもある。ときには、行政と協力して、サポートに入ることも。かかわり方としては「グレー」の領域ですが、本人をここに泊めるケースもある。親との「戦争」が落ち着くまで、何泊か過ごしていいよと。

 

「逃げ場所」があると、その子も落ち着きます。でも現実には、そんな環境は整っていない。足立区でも、制度としてまだないんです。一応、児童相談所に簡易シェルター的なところはありますが、行政の手続きが必要だったり、かなり利用しづらい。実は、第2拠点として、ゲストハウス兼簡易シェルターを開設しようとしています。日暮里ライナーの舎人駅から徒歩3分の物件を借りる予定です。同時に、NPO法人の取得も進めています。実現すれば、足立区初となるでしょう。実現したら、ぜひ取材してください。

 

心強いパートナーと共に

いつも、資金に関しては、やりくりに苦労しています。現在、「寄付金」「助成金」「持ち出し」、その3つのお財布から運営が成り立っています。寄付金では、継続月額寄付のサポーターを募集中。「月1回ぐらい中高生にごはんを奢っておこうかな」と、少しでも思われたらと、月額500円からお願いしています。「助成金」の方は、「子ども食堂」を週に2~3回をやっている団体ということで、その分受けやすくなったのはありがたいなと。食材費分の補助が出れば、負担はかなり楽になりますし。

 

「持ち出し」の方は、事務局長で、実はパートナーであるみきさんに、ずいぶん助けてもらっています。みきさんは、中学時代の先輩なんです。「技術工学愛好会」というのがあって、技術室のノコギリやら万力を自由に使って工作する。みきさんはそこの部長さんで、1年生の僕を勧誘したのがご縁の始まり。その後、別の人生を歩んでいましたが、社会人になってから再会して、意気投合。そして結婚…。こんな不安定な生活の中で、「らんたん亭」の事業を切り盛りしてもらって、本当に感謝しています。

 

自作写真集に刻印された「原点」

(中島さんの写真集を、見せてほしいとお願いする)

学生時代に撮りためたものを、自費出版で冊子にしたものです。前半のページは、大学の吹奏楽部の写真で、練習風景や演奏会など、ず~っと4年間と密着しました。全国大会で、1位の金賞を取ったんですよ。これが受賞直後のスナップ。嬉しそうですよね、みんな。

 

この写真が、先ほどお話したおじいちゃん。僕が幼いとき、雪山で撮ったものですよ。おじいちゃんは、「らんたん亭」のこけら落しの日に亡くなったんです。イベントが終わった直後、お母さんから電話があり、「今、息を引き取ったよ」って。きっと見届けてくれたんだろなと。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

 

【問合せ】

らんたん亭

〒123-0851 東京都足立区梅田4-12-14

TEL:090-852-0622

e-mail:rantan.tei21@gmail.com

Instagram:@rantan_tei21

X:`ravtan_tei

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