子どものため、ジェンター平等を

ジェンダー
地域社会がなくなり、子どもは「ほっつき歩く」

今、会場のみなさまのお話をうかがいましたが、特に「子どもの貧困問題」に関して、さまざまな意見が出ました。父親が家を出てしまい、残された母親が子どもを食べさせていくのに、とても苛酷な状況があるなどです。現代の貧困の特徴は、貧困が孤立状態と結びついていることです。誰も手をさしのべてくれない。関心を持ってくれない。いよいよ困った時、「誰か相談できる人」を挙げることができない人が、半数以上です。

 

私が子どもの頃を思い出しますと、戦後20年間のことから、小学校に行っても、子どもたちはみんな貧しかった。たまに新しい洋服を着ていくと、それだけでいやがらせされたものです。ただ、みんなが貧しかったので、「貧困」であることが、孤独や孤立や排除につながらなかった。これは、世界的に共通するようです。

 

例えば、アメリカの格差社会を描いた書籍『われらの子ども』(ロバート・D・パットナム箸)があります。アメリカでも戦後20年間は、子どもは「われらの子ども」であって、地域のおじさんやおばさんが子どもたちに声をかけ、困ればいろいろと助けるのが普通のことだったと書いています。そんな時代が終わってから現れた「現代の貧困」の中では、困った子どもは、誰にも手を差し伸べられることなく、ただ「ほっつき歩いている」だけと表現されています。トランプ大統領が政治の大転換を起こしつつありますが、大転換の背景にアメリカの深刻な「格差社会」があります。いわゆる労働者階級の下半分が没落して広がる格差は、日本の比ではないのです。これらの人々がトランプに期待しているのです。

 

今、全国で子どもや若者の居場所づくりが進んでいます。なぜ居場所が必要かというと、家庭、学校、地域に安心していられる場所を持たない子どもや若者が増えているという現実があるからです。そのなかには、家に帰ってもなかに入れてもらえない。居場所がないから、ほっつき歩くしかない子どもや若者がいるのです。ご存じかと思いますが、新宿区の路上に出現したたまり場に「トー横キッズ」と名がつけられました。人々は、遠方からも集まってたむろしているティーンエイジャーの姿に眉をひそめるのですが、彼ら彼女らにはそこしか行く場所がないのです。そこに行けば顔見知りがいるし、排除されないほっとできる場所になっています。先日会った長崎県で若者支援しているワーカーが、「長崎にも『トー横キッズ』みたいな場所がほしいです」と言ってました。なぜなら子どもや若者たちの「居場所」「たまる場所」がなくなっているという現象が全国的にあるのです。コンビニ前や公園に数名がいるだけで、通報を受けて警察が来て、解散させられてしまう。解散させられた子どもたちはどこにいけばいいのだろうか。居場所づくりとは、そんな子どもや若者が安心してすごすことのできる場所をつくろう、ということです。

 

「結婚できない」「家族が持てない人」の高齢化問題

今のジェンダー問題をみると、男性の厳しさも顕在化しています。たとえば、独身男性は、「結婚しない」のではなくて、「できない」人が多い。各種の調査にもありますが、「結婚するだけの仕事や財力がないから、結婚はできない」という理由で、早い時期から諦めている。いっぽう、女性で「自分にお金がないから結婚できない」と答える人は1 割に満たない。男性は、稼げる力と妻子を養えるかどうかで、「男としての力」が社会的に評価されてきました。裏返せば、その力が持てないと、「家庭を持てない」ということになり、その傾向が強まっているといえるでしょう。男性が家庭を持てなくなると、それに対応した形で、家庭を持てない女性が生まれるのは当然のことです結婚できない人たちの中心は、やはり仕事が安定していない、経済的に厳しい人たちです。若い人たちの生活基盤を整えることを政策の重点にしていかないと、結婚できない、家庭をもつことができない孤独・孤立の人たちが今後も増えていくことになるでしょう。

 

 

女性が働きながら、子育できる制度の整備を

女性が、結婚後も働く時代になり、労働力としても必要とされています。女性自身もせっかく教育を受けたのですから、社会でその力を発揮したいというのは当然ですね。そうやって夫婦で働きながら、子どもを育てることがマジョリティになった今、環境や条件を整備しなければならないのです。ジェンダーバイヤスの払拭はその前提になります。

 

先ほどの意見交換でも、労働時間の問題が指摘されました。確かに、働き方の改革が進み、残業時間の制限も進んでいます。しかし、いまだに職場に長く残る人が評価される。夫は職場に残りがちで、妻は先に帰って保育園に迎えに行き、家事育児の大半を担うそうした社会慣習や意識が残る限り、「結婚しない」「子どもは生まない」という悪循環が止まらないと思います。

 

欧米では、既婚女性の就業化が日本より早く始まりましたので、日本よりも早く出生率の低下の時代に入りました。そこから、「女性の就業率が高くなると、出生率は低下する」と考えられるようになりました。ところが、1990年代、2000年代になると、その「法則」が変わったのです。北欧、フランスやデンマークをはじめ多くの国々で、女性の就業率は高いのに、出生率が上がっていくようになりました

 

つまり、「働きながら家庭を維持できる社会制度があれば、女性の就業化と子どもを産み育てることは両立する」のです。今、日本、韓国、シンガポールなどアジアの先進工業国は、欧米諸国よりも出生率が著しく低い状態です。その原因は、女性の社会的地位が低く、性別役割分業体制が強く、共働きをしながら家庭を維持するような環境になっていないことにあるのです。そうしたことを、もっと真剣に考え、取り組む必要があります。時間が来ましたので、ここまでさせていただきます。本日は、本当にありがとうございました。

 

(記録/ライター・上田隆)

 

 

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