「ありのままの自分」見つけるフリースクール

不登校
子ども家庭支援センターで、2年間、子育てママの相談受け

「あだちファミリースペース every tree」を立ち上げたのは、長女が不登校を経験して、いろんなことが分かるようになったからです。実は、次女が通っていた中学校でも、不登校の子が増えていることに気づきました。それで、自分が経験したことを伝えたり、不登校児が遊びに来てくれるような場所が持てたらいいなと。一応長女にそのことを話すと、「いいんじゃない」と言ってくれまして。

 

保育園を辞めることにしましたが、いろんな学びにもなると考えて、異動という形で、いったん「子ども家庭支援センター」に勤めることに。入所当初から、数年先には辞めることも伝えました。そこはまだ幼い子どもたちが対象です。若いママからの相談を受けると、子育てについては何も知らない。準備なしに、生まれていきなり赤ちゃんと向き合うのは、本当に大変だなと。情報もいっぱいありすぎて、悩みますよね。今の子育て事情を目の当たりにし、2年間勤めて退所しました。

 

念願のフリースクールを立ち上げたのは、2023年。かつて職場は台東区でしたが、地元足立区の自宅近くの物件を探します。半年かかってここを見つけました。リフォームでは、左官屋のダンナが壁塗りをしてくれて。内装が整うと、次女も本など荷物を運ぶなど、家族が少しずつ協力してくれました。

 

「ありのままの自分」で過ごせるフリースクールを

ホームページで紹介している事業内容の大枠は、「フリースクールevery tree」「イヘント&コミュニティづくり」です。

 

まず「フリースクールevery tree」ですが、月・水・金の週3回で、13:00~16:00に開催。ここは学校へ行かない子がほっとくつろげ、ありのままの自分でいる時間を過ごす場です。「何かやってみる」ことも、「何もしないこと」も選べる。手芸、図工、習字、ゲーム、勉強など、好きなものを見つけて、笑顔になればそれでいいわけです。そして、様々な人と出会い、「あなたは、あなたのままでいい!」という大人がそばにいることを感じてほしい。

 

勉強は、ほぼしていません。最初のうちは、ドリルなど持ってきた子どももいましたけど。ある子は、本当にイライラして、ドリルに向かうも、芯が折れるぐらい鉛筆を押しつけ、消しゴムを使えば紙が破れるほど。保護者の方とも相談して、自分の好きなこと見つけたり、お話したりすることに切り替えました。すると、楽しく過ごしてくれるように。

 

子どもの言葉と気持ちを「聴く」

前職を辞める前に、コーチングの資格を取ったんですよ。これまで保護者の方の相談は受けましたが、その経験と合わせて、お子さんへの接し方に役立てまして。私、結構いろいろ質問するんです。そのときの気持ちとか、何をしたのか、何が楽しかったのかとか。質問していいかは、相手にちゃんと断ります。例えば「今から長い針が、数字〇から〇まで動く間、私、話したいんだけど、いい?」と相談。「何かやりながらでいいか?」と言われたときは、別にいいと思うときはいいし、「ちゃんと聞きたい」というときは、しっかりそう伝えます。

 

「相手が、私を好きかどうか」は、分かりません。「距離感が近すぎて、ちょっと…」と思う子もいるかもしれないけど、それに慣れるかもしれない。次も来てくれる子は、少なくとも大丈夫かなと。人との距離感の取り方は、子どもの方が、大人より敏感です。学校でも「あの先生はすぐ怒る」と敏感に察知して避けるのは、子どもの方ですから。

 

「感情」を「聴く」ことも大事にしています。娘もそうですが、質問しても「イヤだ」「いい」も言わないし、詳しく聞くと「う~ん、別に」「分かんない」と答えるだけの子もいます。でもいろいろ話していくうちに、「色」で聞いてみることを思いつきます。「今、色でいうとどんな気持ち?」と問えば「赤!」と、ある子。「赤って、どういうの?」と聞き返すと、「怒り」と答えます。学校に行けないけど、本人にすれば、「行こう」と思っている。でも、親や先生から「行け!」と言われるので、もう行きたくなくなってしまう。その感情が怒りになって内向し、もう体が「学校」を受け付けなくなる…。

 

「学校には行きたくない」という子がいる。一方で、「友だち関係や部活が楽しいから、学校へ行きたい」という子がいる。行ってもいいし、行かなくてもいい。例えば、学びたい大学があって、高校に合格しなければならない。勉強が足りなければ、やっぱりどこかで頑張らないといけない。それは本人のやることです。子どもたちによく言うのは、「私は、代わりに勉強はできないけど、応援はできるよ。だから何でも相談はしてほしい」と。「こんな本が必要」「ここで学ぶといい先生がいる」など、夢がはっきりすれば、アドバイスもしやいすいわけですし。

 

ママも子どもも夢中になる、地域に開かれたイベント活動を

「イヘント&コミュニティづくり」では、形は決めてません。サポートの対象は不登校児と地域の保護者ですが、地域に開いた活動を行い、さまざまな人を巻き込んでいきたいと考えています。ここでは不登校の問題ばかりでなく、とくにママの「やってみたいこと」を応援できればなと。これまで、メイク、ヨガ、フラワーアレンジ、ミニマルシェなどママ向けのイベントを開催し、とても好評でした。さらに、ママ自身が企画した「お片付け」「性教育」などをテーマにした講座も行いました。この場を、レンタルスペースとして貸し出す形で、1時間1000円と代金もいただいて。お子さんの見守りを要望されるなら、元保育士の私が引き受けています。ママたちが、地域で何か発信して楽しんでいる背中を、子どもたちに見せられることが大事かな。

 

今後は、大人と子どもが自然に交流できるイベントも行いたいです。まだ実現していませんが、子どもたちと共に、農家や酪農家など生産者を訪問して、日常の食べることが、どういうつながりで成り立っているのか学ぶのもいいでしょう。あとは、子どもたち自身が、イベントを企画し、実現することも考えています。自ら準備したり、チラシを作ったり、予約を取ったり、実際に行動して学ぶ方が、いろんなことへの関心も広がるはず。

 

基本的には、不登校児の居場所ですが、イベントなどを通して、学校に行っている子、行ってない子がごちゃまぜに集える場になればいいなと思っています。

 

「私だけじゃない」と話し合える保護者の交流会

保護者からの育児相談も受けています。ここに来てもらうこともありますし、オンラインで話を聞くことも。月1回の交流会で集まるのは、1~5人。ふだん胸にしまってことを、当事者同士の間で話すと、気持ちが落ち着かれるようです。

 

例えば、お子さんが不登校の理由に、教室の椅子を引く音やチョークの音が苦手など、いろんな過敏さがあって、「周囲からぜんぜん理解されない」と言われる方がいる。すると「うちもそうなの!」という声があがると、「私だけじゃなかった」と安心するわけです。

 

「ご飯問題」の大変さはよく話題に出て、みなさん「そうそう!」と。ある方は、お子さんが学校に行かなくなって、働きながらも、1日3度の食事をつくり続ける。ある日、体調を崩し、ダンナと職場に相談して休職。体を休めると気持ちも和らぎ、お子さんも元気になったと話されました。やはり、保護者のメンタルなんです。

 

お子さんの進路のことも大きいですね。個人面談でのあるママからのご相談でしたが、話すうちに悩みの度合がどんどん大きくなる。「不登校になったら、成績はどうなるのか?」「卒業はできるのか?」ということから、「このままずっと引きこもりになったら、どうしよう」「自分たちが死んだら、誰が子どもの面倒を見るんだろうか?」と。ママがしんどそうだと、お子さんもつらくなる。ですが、進路は、大学までの「単線」ではなく、いろんなルートがあることをお伝えすると、安心される。私が、「不登校進路未来講座」でお伝えしていることです。

 

シニアも地域の人も、かかわってほしい

「シニア向けスマホサービス」ですが、シニアの方々に「不登校」のことを知っていただきたいために設けました。「学校に行ってなくても、頑張ってる子がたくさんいますよ」と。この世代は、「学校に行くのが当たり前」と思っている方が多いからです。これを考えついたのは、うちの子どもたちが、義理の父母にLINEや写真の送り方を教えているのを見て。スマホサービスは、いつかここに来た子ども自身が行えばいいかなと。

 

当初から、さまざまなサービスを打ち出しています。ホームページ作成を依頼したエンジニアの方(保育園時代に知り合った保護者)は、「こんなにいっぺんに出すの?!」と呆れられました。確かに、「フリースクール」とだけした方が分かりやすいですが、とにかくいろんな人たち、特にこの地域の人たちにかかわってほしいと思いまして。

 

子ども時代を過ごし、キャリアを積んだ地元で活動を

ここ足立区梅田に家族と住んでいますが、私にとっては子どもの頃からの思い入れのある地域なんです。小学時代、担任の先生が主催するサマースクールを手伝うため、先生が住む梅島(梅田の隣町)に、実家の台東区からよく通っていました。保育士の道を選んだのも、キャンプなどで小さな子と楽しく過ごしたことが影響しています。専門学校時代に実習で行った幼稚園は、英会話などのお勉強をしていました。しかし、かつて体験したキャンプのように、「子どもたちと、泥んこになって園庭で遊びたい」と、保育園に就職した経緯もあります。

 

フリースクールを始めた今、この地域のことをもっと知りたいと思い、「睦会」に入りました。そんな折、町会長さんから「民生委員の仕事をやらないか」と声をかけていただき、お引き受けしたんです。これまで先輩の方々が担われた地域のことにかかわれば、いろんなことが見えて、活動にも広がりが出るのかなと。

 

娘の不登校で得た、かけがえのないこと

娘が不登校になったとき、ショックというよりは、「何とかしてあげなきゃ」という気持ちが先に立ちました。娘のために、「高校を選んであげなきゃ」「進路を探してあげなきゃ」と、先に先にと進めてしまう。そんな親心が、かえってわが子を追い詰めていたのかもしれません。娘には娘の人生がある。本人が一番したいと思うことを選ぶ、それを「待つこと」が大事なんだと、いろんなことを通して学びました。フリースクールに来る子に対する接し方の基本になっています。

 

「こうしなきゃいけない」という「常識」に、いかにとらわれていたか。このことに気付けて、本当に良かったんです。下のきょうだいたちも、自分たちの道をしっかり選ぶことができた。そして私も、自分の好きな道を歩み出している。長女のおかげです。

 

(聞き手・ライター上田隆)

 

【問合せ】

あだちファミリースペース

代表・小宮久恵

東京都足立区梅田6-3-10

050-3718-0239

info@every-tree.com

HP:https://every-tree.com/

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