<インタビュー・佐藤あいさん>
小1の娘が、行き渋りとなりフリースクールに
今、次女は小学4年生ですが、小学1年生のときに、学校への行き渋りが始まりました。娘自身、その理由を言葉にできないので、「なぜ行きたくないか」が親として分からない。わが子にどう接したらよいか、とまどってしまう。まず、「どうすれば、学校に行けるようになるか?」という思考になりまして。
足立区の教育相談所(「こども支援センターげんき」)に電話をしてみたら、相談の予約日が、「最短で1カ月後以上も先になる」と言われます。すぐに頭に浮かんだのは、「この1カ月、どうしよう!?」と。夫婦ともに仕事がありますが、幼い娘を家に1人でおくわけにもいかない。私は議員として、ちょうど「不登校」に取り組み始めていましたが、当事者になって初めて、「あっ、こんな状況になっているんだ」と改めて気づきます。
結局、娘は、足立区梅田にある「あだちファミリースペース every tree」でお世話になることに。代表の(小宮)久恵さん(ルポvol.66)が2023年に立ち上げて、すぐのタイミングでした。わが子から「行かない!」という意志をはっきり示されて後、必死で探してみると、たまたまご近所にあったんです。早速、見学に行ったら娘は気に入って、「学校は1人で行ける日はないけれど、ここだったら1人でも行く!」と。以来ずっと通い続けています。
家族、社会から孤立していく母親たち
議員として活動するうち、当事者である保護者の方々とつながり、意見交換する機会も増えました。みなさんが一様に口にされる最初の悩みは、「休ませるか、いなか」。私自身もそうでした。判断の境い目が、本当に難しいんです。
当然、各家庭では、「無理して行かせる必要はない」から「背中を押しても行かせるべき」まで多様な意見が出ます。実際は、個々の子どもの状態によって、「正解」は違ってくる。でも親世代は、「学校へ行くのが当たり前」という感覚が根っこにあるのか、本音では「行かせたい」と思ってしまう。
夫婦間で一致しないことも多い。とくに父親が母親に、「お前が甘やかしているからだ」と責めるケースをたくさん見受けます。すると母親の方が、「私の育て方が悪かった」と落ち込んでしまう。そして「不登校離職」されるのは、たいてい母親の方です。専業主婦だとしても、丸1日、お子さんと一緒に家にいる状況になれば、ストレスが高まって親子喧嘩も起きる。
また、「不登校児」は増えたと言っても、やはり大多数の子は通学しています。周囲のママ友に相談しても、「無理しても通わせなよ」「あなたが優しすぎる」などと言われてしまい、共感されない。
家族、地域社会の中でも、どんどん母親が追いつめられ、独りぼっちになっていく。メンタルを病み、精神科に通われる方もおられます。
足立区で年に3回、当事者の会(「子どもの不登校のことで悩む保護者のための講演会・交流会」)を開催しています。昨年、私は毎回出席しましたが、参加者の大半は女性。「不登校」に関しては、母親側の負担が重いと感じています。
学校に行かない子どもの苦しみ
学校に行かないお子さんも苦しい。わが子もそうです。
不登校となった小学1年生のときです。幼いなりに、いつも周りを気にしてしまう。「今は学校がある時間だから、公園にも行っちゃいけないな」「みんな帰ってくるから、もう家にこもってなきゃ」「フリースクールの行き帰りも、登校下校時間が重ならないように」など。そんなこと、親は言わないのに…。
子ども自身も、保育園や幼稚園時代から、「学校は行くもの」と思っている。「小学校に入学したら、楽しいよ。友だちいっぱいできて、いろんな勉強もするんだよ」と、親や周囲の大人から言われ、ワクワクしながら行ってみれば、大変なことばかり。「ムリだ!」となったとき、「みんなが行くものなのに、自分は行けない」と悩んでしまう。
大きくなったとき、当時を振り返って、「いい経験ができた」と思えるかもしれない。ただ、その最中にいる子は、「自分はダメなんだ」と落ち込む。親御さんも「育て方を間違った」と自身を責めてしまう。「そうじゃないよ!」と、私は伝えたいです。
うちの子は不登校が長くなり、もう4年目になりました。「なんで学校に来ないの?」と友だちに言われても、平気になったようです。多分強くなったんだなと(笑)。
「不登校」にカウントされない子どもたち
令和7年度における足立区のデータでは、小中学校合わせての不登校児が「1,644人」。これは、令和2年度「997人」の1.6倍です(出典/足立区「不登校児童・生徒の状況(過去5年間の推移など)」 。文部科学省は、「不登校児童」を「年間30日以上の欠席した者」と定義づけていますが、この枠から漏れてカウントされない子どもが存在します。うちの娘もそうで、フリースクールに通うため「登校」扱いされているからです。
ある子たちは、苦しい思いをしつつ何とか登校するも、教室には行かず保健室や別室で過ごす。フリースクールには行かず、校門タッチで帰宅する子もいます。「欠席日数が増えてしまえば負担に」と、先生たちもさまざまに苦慮し、対応されている。「登校」の形になっていても、何らかの支援が必要なんです。
これまで、足立区では、教室で授業を受けることができないお子さんが、どのくらい存在するか、まったく把握できていませんでした。不登校支援の施策について、不登校ジャーナリストの石井しこうさんと個人的にミーティングをした際、「実態調査を行った自治体がない」という話に。そこで議会に、学校生活に関するアンケート調査の実施を提案し、実現しました。対象は、区立小中学校に通うすべての児童・生徒および保護者の皆さま。児童・生徒にとっての居心地の良い学校づくりや、保護者の方へのサポートの検討などに活用させていただくことを目的としました。現在、学識経験者の調査分析結果を踏まえ、不登校未然防止の取組についてこれから検討が進められています。
小学校低学年の不登校対策が、見過ごされている
『アンケート』の結果にも表れていますが、小学生の不登校児が増えています。そして、とくに低学年の居場所がないことも判明。これは私自身が体験したことですが、足立区内の教育相談施設は、小1の娘の相談は受け入れてくれるものの、「通いの学習はできない」と言われました。自習できる中学年にならないとダメだと。足立区では、民間のフリースクールにおいても、小学生は中学年以上から高学年を対象とする所ばかりなんです。
それでも足立区は、他の自治体と比べても、支援を積極的に行っています。小中学校では、「別室」という自習スペースを設けるように。ここには、民間から募った「登校サポート」のボランティアの方が連れ添うことが可能です。一方で、中学校では、「SSR(スモール・ステップ・ルーム)」の設置が着々と進められており、令和9年までには全校にいきわたらせるとのこと。ちなみに「SSR」とは、学級に入りづらいと感じた生徒が、心を落ち着かせることのできる空間で、自分に合ったペースで学習・生活できる教室です。「別室」と違い、教員免許を持った先生が常勤しているので、その子が望めば、マンツーマンで授業も受けられる。元々不登校児が多い中学校の支援はかなり充実してきていますが、小学校の方が取り残されている形です。
「学校に戻りたい」という子であれば、別室やSSRを使った登校支援が必要です。「行きたくない」、だけど「学びたい」「居場所がほしい」という子であれば、フリースクールが必要となる。国としても「学校に戻すことだけがゴールではない」という不登校対応の方針を、はっきり打ち出してやり(2016年12月成立「教育機会確保法」)、今後、「学び」の在り方自体が変わる流れになるでしょう。

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