「レジリエンス」とは?

レジリエンス

<講演/勝亦麻子さん>

自身の「力」に気づいてもらう

後半を担当します勝亦麻子です。私は、NPO法人「レジリエンス」のスタッフでファシリテーターを務めますが、本業は福祉施設のソーシャルワーカーです。司会の橋本さんとは、12年前に女性を支援する福祉施設の職場でご一緒しました。当時、主任をされており、素晴らしいソーシャルワーカーとしてお手本としていましたが、1年後に転職。その後、ゆるやかなつながりを持ち続け、今回このようなご縁をいただき、本当に嬉しく思っています。

 

私が担当する四ツ谷の「こころのcare講座」の参加者から、よく受けるご相談を、3つ事例としてご紹介します。

 

まず1つ目。その☆さんは、「パートナーと別居したものの、モノハラを受けてきた実の親とは関係が悪く、頼れる人がいないが、どうしたらかいいか?」との質問。「今まで、どのように対応してきましたか?」と尋ねると、「友たちの1人に協力的な人がいる」「(お子さんのいる方なら)児童相談所につながってます」などの答えが返ってくる。もうすでに、ご自身に「力」があるわけです。

 

2つ目のご相談は、「会社の人間関係が上手くいかない。人に頼まれたら断れなくて、悩みを聞いて、疲れてしまう」。「こころのcare講座」では12個のテーマがありますが、この相談は、その1つの「コミュニケーション」で対応することに。2人のファシリテーターでロールプレイをしながら、☆さんに「断り方」を教えます。ご本人に「断り方」を改めて尋ねると、2、3の案は出される。

 

3つ目は、「DVに理解のある弁護士さんに出会えない」。もし、ご紹介できる弁護士さんなら紹介しますが、相性もある。「ここに行けば、あなたに最適の弁護士が」とは、なかなかこちらからは言えません。「こころのcare講座」では、DVの構造、加害者の特徴、☆さんの影響など、知識として「DV」を学んでもらう。その上でご本人に、「弁護士さんにDVを理解してもらうよう、あなた自身が努力することも必要かもしれませんね」とお伝えします。仮にDVを理解してもらえなくても、「事務手続きをやってくれる人」と割り切って、心のケアはカウンセリングを利用する、と決めていいわけです。

 

いずれのケースでも、☆さん自身に回復する力があることに、気付いてもらうことを心がけています。

 

生涯持ち続けるその人自身の「力」

私が働いている福祉施設の利用者さんは、生活保護を受けている女性たちです。年齢層は幅広く18歳~80代まで。親からの虐待やパートナーからの暴力、家賃滞納などの貧困、精神的な病気など、さまざまな困難を抱えられている。この施設では、生活を立て直すために、社会に出る準備をする目的で、約1年ほど暮らすことができます。

 

ほとんどの方は、家族と疎遠になっていて、頼れる身内もいないという方が多い。そして、傷つき経験をし、「自信がない」「何もできない」と思われている。ある高齢の利用者さんもそうでした。「やることもありませんし、早く死にたいです」と、いつもこぼされます。ある日、同行した病院の帰り道でした。その方は、元プロのジャズシンガーでしたので、「どんな歌を歌っていたのですか?」と尋ねたんです。戦後すぐ、ジャズ喫茶で働かれていたそうですが、アメリカの兵隊さんに喜ばれたという曲目を教えてくれました。「歌ってほしい」とお願いすると、英語のジャズの歌声を披露されました。本当に素晴らしくて感動しまして。人は、年齢にかかわらず、その人ゆえの「力」を、いつまでも持ち続けるのだなと実感しました。

 

ドッグセラピーがもたらす幸せ効果

私たちの施設では、「ドッグセラピー」も行っています。訓練されたセラピストドッグが5頭ほど来てくれ、利用者さんたちの心を癒やします。「耐性領域」を広げることに、とても有効なようですね。触れ合うことで、ストレスを抑える脳内ホルモンのオキシトシンを増やすと言われていますから。

 

「オキシトシン」については、「こころのcare講座」でも、「パートナーシップ」のテーマの中で説明しています。親密な関係において20秒間ハグされると、オキシトシンとドパーミンが分泌され、幸せ感が高まり、心の痛みが沈静化する効果があると。ただし、相手がDV加害者であっても、ハグされれば幸せ感から、「やり直そう」「一生寄り添う人だ」と思ってしまう。そんな危険性があるので、注意も必要なんです。

 

ドッグセラピーに話を戻します。施設では、精神障害があり、薬を常用するため昼夜逆転になっている方もおられる。しかし、その同じ方が、ドッグセラピーの日は起き出して、犬たちと楽しそうに過ごされることに驚きます。普段は不安げな表情しか見せないのに、この時間だけはずっとニコニコ。人間のセラピーより、効果がある! ちなみに施設では、猫カフェに行くという外出行事も人気です。

 

見過ごされがちな高齢者のDV被害

最後ですが、虐待やDVなどの傷つき経験は、高齢者の方にもあるということをお伝えしたいです。とくにDV被害者は、20代から40代の女性を思い浮かべられるでしょう。でも、85歳の夫が85歳の妻に暴力をふるうと、「夫が妻の介護に疲れて、手を出してしまった」と見なされがち。加害者の夫に同情が集まることが、起きやすい。

 

実際には、高齢になって初めて離婚調停して、新しい人生を始めようという方もいます。高齢でも女性の場合は、若い人より、病気がちだったり、トラウマの影響が大きいとされ、一般の高齢者より早く死亡するリスクが高いとする研究結果もあります。ですが、高齢者のDVは、支援者の中でも理解のない方がある。そのため被害に遭われた方が、諦めてしまうということも起きています。

あと、西山さんの方で補足をお願いします。

 

 

<講演/西山さつきさん>

「HALT」の心理状態とは

高齢者に限らず、暴力をふるわれていい人は、1人もいないんです。その視点を忘れないでほしいです。また、動物が耐性領域を広げるという話がありましたが、植物など自然の美しさに癒されることも、その効果があるでしょう。

 

耐性領域が狭くなっている状況と同じですが、依存症の方に依存行動が出やすい心理状態を「ホルト(HALT)」と言います。「H」が「ハングリー(Hungry/空腹)」、「A」が「アングリー(Angry/怒り)」、「L」がロンリー(Lonery/孤独)」、「T」が「タイエッド(Tired/疲労)」を指し示します。「H(空腹)」を満たす「子ども食堂」は、とても大切な活動ということに。A(怒り)」はハンドモデルで、ぱっと手を開く激情の中にあります。「L(孤独)」のときは、破滅的な思考になりやすい。「T(疲労)」のときは、気持ちに余裕がなくなりますから、支援者自身も気をつけるべき。「HALT」には、「立ち止まる」という意味がありますから、これを常に意識して、心の状態をチェックすることは、支援者こそかせないことかもしれません。

 

「トラウマ経験」を「成長」の糧に

人生において、「こうなるはず」の予定が、阻害要因によって変わってしまうと、「トラウマ」になりがちです。これは、誰にも起こり得ること。そのときの感情を「グリーフ(悲しみ・喪失感)」という言葉でも示せますが、トラウマ経験はとても大きな喪失体験なのです。その道の先に、「PTSD(Post Traumatic Stress Disorder/心的外傷ストレス障害)」が続いていて、心や体に深刻な悪影響を引き起こしてしまう。

 

しかし、トラウマ経験は、「PTG(Post Traumatic Growth/心的外傷跡成長)」にもなりえます。人を強くさせ、成長させる側面がある。私は、DVを経験して相談につながり、2歳と生後2カ月の子ども2人を連れて、家を出ました。今振り返ると「いや、よく出れたなぁ」という自分の人生の1つの実績になっています。壁にぶち当たるたびに、「あの経験の中で頑張れたのだから、今度も乗り越えられる」と自身を励ましてきました。PTGを意識した支援が、もっと広まっていくことを願っています。

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